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北米バレエ留学についていった話
京都のはずれにある小さなバレエ教室からいきなり4人の生徒がニューヨークとボストンにバレエ留学をすることになり、教室の先生の配偶者である甲斐性なし旦那が生徒達を引率してひと夏を見守ることになったのだが…
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Author:引率の者
妻(元バレリーナ)が拾ってくれなかったら、僕はとうの昔に大西洋で魚のエサになっていただろうな。いまは小さなバレエ教室の隅っこで日々たのしく暮らしています。もう大丈夫。



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白鳥の湖
0622.jpg

朝5時の起床、ログ書き。少しずつこちらの時間になれてきた。ということは朝起きるのが徐々に苦行になってきている。怠け者の体内時計は一日26時間を正確にきざむ。

7時30分KちゃんをつれてABTへ、途中のデリでサーモン・クリームチーズ・サンドイッチを買い半分をランチバッグに放り込んで本日のお弁当にする。残りは僕の朝食だ。

8時頃にABTに到着するともうすでに妖精さん達がならんでいた。その並びにKちゃんを置いてその場を離れる。一日背筋を伸ばしてバレリーナでいてね。ユニオンスクエアで一緒に歩いていた生徒達が灰色リスをみつける。こちらの公園では野良猫並みに一般的な動物も日本人にとっては珍しいもの。嬉々として写真をとる。動画も撮る。日本から持ってきた貴重なデジタルカメラのメモリーはこのようにして無駄に消費されていくのだ。

今日はNちゃんも完全回復しているので全員ステップスへ、9時半からの初級クラスと1時からの中級クラスに参加することにする。一日二クラスだ。計3時間のレッスン、実際のバレエ学校のスケジュールに幾分か近づいた。今ABTにいるKちゃんは1日6時間以上踊ることになっている。こちらのグループのお昼ご飯は自分たちでおなじみステップス・カフェですませることにする。レッスン後のおむかえは2時半以降となる。

昨日に生徒と相談してニューヨーク一発目のバレエ公演はヴィシニョーワ主演の「白鳥の湖」に決定していた。公演日は本日だ。当日の立ち見席が発売になるのでリンカーンセンターをめざす。リンカーンセンターへむかう途中に有名な「アップルストア」をみつける。相変わらずお高くとまった嫌味な内装と店員だ。ご存知ガラスの階段もある。リンカーンセンターの周りには「公衆ピアノ」なるものがある。誰でも弾くことが出来る路上ピアノで「これはみんなのピアノです」と書いてある。ピアノが弾ければモテモテだ。

チケットブースの前にはもう二人ほどがならんでいる。そこに続いて並ぶと前のおじさんに話しかけてみた。このおじさんも立ち見席目当ての客だ。聞けば先週の土曜日は、コジョカルのマティネとオシポワのソワレを連続でみたそうだ。さすがに疲れたと言っていた。できるだけたくさんの公演をみるために、こうして毎朝ここに並び20ドルの立ち見席を購入する。真のバレエファンだ。そしてこの真のバレエファンたちを支える格安チケットの存在がアメリカの文化事業の懐の深さだ。貧乏学生も脚を棒にさえすれば至高の芸術に触れることができる。

一番先頭のおじさん、まったくおじさんばかりだが、このおじさんは朝7時半からならんでいるそうだ。今日はヴィシニョーワの白鳥だから、早くから並ばないとやばいと思ったらしい。この時点であまり並ぶ人がいないことが信じられないと嘆いていた。立ち見に最適な場所をたずねると、4階のドレスサークルの立ち見席がお勧めらしい。バレエ通たちの推薦だから間違いない。

10時になりチケット販売が開始され、無事に人数分購入できた。バレエファンのおじさんたちにお礼を言ってリンカーンセンターを後にした。

公衆無線LANをもとめて、先ほどのアップルストアへ。こんな10年以上も前のiBookだがもしよろしければアップル社さま謹製の無線LANの末席に置いてもらえないだろうかと頼むと、「アップルストアの無線LANアクセスはすべての人々に提供されています。」と明るい笑顔で答えてくれた。そこはかとなく先ほどの罵倒による罪悪感にさいなまれながらも木机の上にこの薄汚いiBookを置いてしばらくチェックできていなかったメールを見ることにする。

妻でもあるアイコ先生から何通かメールが届いているようだ。インターネットに安定して接続できるのが3~4日ぶりなのであちらからのメールを無視し続けたことになる。最初の夜のスカイプによる連絡以降、スタジオや日常の近況報告にはじまりニューヨークでの生徒の様子をたずねる内容から、徐々に心配のトーンが強くなるのがみてとれた。

やばい、怒ってらっしゃる。すぐに携帯電話メールにネットに接続している旨をつたえ、スカイプを立ち上げる。直後にコールが入った。アップルストア自体が体育館くらいの広さがあり、そのなかで商品の説明や、操作のデモンストレーション、iMacのまえで奇声を発するガキども等が入り乱れる環境だ。画面横のマイクにむかって必死によびかける。応答があった。音声はイヤホンで聞こえるので鮮明だ。しかしこちらのiBookの処理能力の限界なのか同時に音声を発するとうまく伝わらないようだ。あちらがイライラしだすのがわかった。毎日時差ぼけに苛まれ、頭痛、腹痛、靴ずれ、軽い喘息、おひざが痛くて僕もう歩けません、を聞いてもらおうと思っていたのに。「はっ?何?なんなの?」とか怖い口調が地球の裏側から聞こえてくるころには、そっとスカイプの「切断」ボタンを押下する僕がいるのだ。

2時半までにはまだまだ時間がある。一度宿泊先にもどることにする。おそとはもうあついあついあついあつ。ジョンレノンが惨殺死体で発見され現場にはなぜかレタスが散乱していたとかしてなかったとかのダコタアパート脇をぬけて地下鉄で宿泊先にもどる。

迎えの時間まで2時間ほどあることを確認して、すこし眠る。寝過ごしは厳禁なので目覚ましをセットした。部屋にはひとり。冷たい石壁をつたわり喧噪を遠く聞く。

振動機能付き目覚まし時計がうなる。目覚めは快適だ。よく寝たのだろう。部屋が赤かった。夕焼け。寝過ごしたと理解した。夏のニューヨークの夕方は午後7時を過ぎる。あわてて飛び起き携帯電話を必死に捜す。ステップスの前に3人、ABTの前に1人、黄昏時の異国の街に子供が途方にくれている絵がうかんだ。

携帯電話。時間。午後1時30分。携帯電話の液晶ディスプレイがそう示す。思い出した。この部屋の壁は始めから悪趣味な赤色でペイントしてあったのだった。だれもいない部屋で一人芝居を演じていたので口がからからになった。気まずい猫の毛繕いのごとく、ぐったりしながら洗面所で歯をみがいてから生徒を迎えにいった。

生徒たちと宿泊先にもどる前にステップスの下階にある生鮮食品店で少量の食品の調達をした。果物はこちらの皮ごとたべる葡萄をすすめた。

4時30分を過ぎてABT前に到着。今日もご父兄の皆様が生徒たちが降りてくるのを待っていらっしゃる。隣にいた人妻にとりとめの無い話をするふりをして、さりげなく今夜のABT公演ヴィシニョーワの白鳥を観に行くことを自慢する。人妻はニューヨークの景観スポットをいくつか紹介してくれた。大都会に早くも疲れていたので必ずおとずれることを約束する。電話番号も交換したような気がする。

Kちゃんは5時頃おりてきた。帰りの道すがら本日の感想を聞くと、何やらとても楽しかったようで、パ・ド・ドゥ・クラスもすでに始まった模様。アイコ先生に報告すると機嫌が直るとおもうので、明日電話しようね。

宿泊先に戻り、シャワーをお出かけの支度をして降りてくるように指示した。宿泊先前の路上で一時間ほど待つ。この間に、家具をひとりで移動するきれいなおねいさんを手伝い、颯爽と「よろこんで(キリッ」と返しざまに後ろの柱に尾てい骨をしこたまぶつけそのままもんどりうって前に倒れたのは内緒。

Kちゃんはこの一時間で、昼寝をしていた他の生徒を叩き起こし、シャワーをして一日のレッスンの汗を流し、お出かけ用の身支度をし、髪をまとめてから降りてきた。女の身繕いには時間がかかる。待つさ。

4人とも普段よりは「それなり」の格好をしてリンカーンセンターに向かう。劇場近くのスターバックスで大急ぎの夕食。スターバックスに住むたぬきが紙ナプキンを束ねてつくったサンドイッチをアイスティーで流し込んでから、いざメトロポリタン歌劇場へ向かう。

荘厳な入り口階段を上り、4階の客席内へ、生徒たちはここで今夜は立ち見だという事実を知らされる。あたりまえだバレエの生徒は立ち見が基本。ABTのダンサーたちも昼間にレッスン・リハーサルをして夜に公演をむかえる。立ち上がっている時間は一緒だ。この立ち見席は、なるほど通たちの言うだけはある、ここなら舞台に対しての死角はない。

公演の内容については言うまい。門外漢の戯れ言でしかない。ただ時々出てくるあのレタスおじさんが犯人には違いない。ニューヨークにずっと住んでいるのだ。これからも。

幕間に昼間のバレエファンのおじさんに再会した。生徒たちを紹介すると、双眼鏡を貸してくれた。途中で返してくれればいいという。舞台に黒鳥が来るまでには返さなくてはならないとおもった。生徒たちに早く返すように促すが最初のオディール登場シーンには間にあわなかった。わるいことをした。

公演が終わり、おじさんに双眼鏡のお礼を言ってから、帰宅の途につく。時間は夜の10時前。少し危険な時間帯にかかってきている。離れないように皆に言う。このときばかりは緊張感をもって周囲に目を配る。即時に実効対処できる範囲が3メートルくらいなので、生徒をそのサークルに入れたままで移動。

宿泊先に到着。明日に備えてすぐに寝るよう伝えて解散した。あしたはKちゃんだけが7時30分に集合。

宿泊部屋にもどるとモントリオールから自転車できたというカナダ人が飲んだくれていた。荷解きの途中で飲み始めてしまったようで片付けられない病みたいになっていた。アイコ先生に電話するために、とうとうコーリングカードを購入した。今度はクリアーな音声環境だ。機嫌を直してくれたようでよかった。女房は昼間(日本標準時間)に限る。あと4時間半でまた次の一日をはじめなくてはならない。

やっぱり公演の内容について率直な感想をのべたい。あいかわらずのABTらしくそろわないコールドは、予想の範疇。しかし中には完全に技量の劣るダンサーを散見する。またヴィシニョーワのオディールは力の入り過ぎであったようだ。そのまれなる筋力から弾き出される動作に自らが対応できず、完全にオフバランスであった。ここでABT内の人員マネージメントを憂慮してみる。そこに健全な競争はあるのか?客演ダンサーに対しての公正な処遇はなされているのか?
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テーマ:バレエ - ジャンル:学問・文化・芸術



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