北米バレエ留学についていった話
京都のはずれにある小さなバレエ教室からいきなり4人の生徒がニューヨークとボストンにバレエ留学をすることになり、教室の先生の配偶者である甲斐性なし旦那が生徒達を引率してひと夏を見守ることになったのだが…
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Author:引率の者
妻(元バレリーナ)が拾ってくれなかったら、僕はとうの昔に大西洋で魚のエサになっていただろうな。いまは小さなバレエ教室の隅っこで日々たのしく暮らしています。もう大丈夫。



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日本人なめんな
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ACアダプターである。USB接続の携帯電話の充電器である。これが昨日から見当たらないので難儀をしているのだ。今朝まで宿泊したユースホステルのどこかに置き忘れたのか、それとも、誰かが持っていってしまったのか。とにかく新たに規格の合う充電器を購入する必要がある。携帯電話のバッテリーの残量は25パーセントを切っているのだ。

今日はKちゃんがお友達のご家族に野球観戦に連れて行ってもらうので、12時に宿泊先前に集合ということになっている。今朝は遅くに起きてきても問題なかったのだが結局午前7時には部屋を出てきている。

昨日は、同室となったイギリス人女の子が彼氏と離ればなれの部屋に宿泊することになってしまったと言うので、その彼氏と部屋をかわってあげた結果、みごとな野郎部屋での就寝となってしまった。力いっぱい夜遊びを楽しんだであろう同室の3名は昨夜は午前4時過ぎに戻ってきてそのまま大イビキで眠っていて、人いきれと酒臭、散乱した衣服で室内が非常にワイルドな状態になっており、かなわないので早々に部屋を這い出したという次第である。

朝食を済ませて、再び部屋に戻ると3名はまだ眠っていた。起こさないように静かに荷物をまとめて部屋を出る。この旅程最後の引越しだ。受付でチェックアウトを済ませて、仲良くなったスタッフに挨拶をする。このユースホステルでは毎日お客を楽しませるイベントを企画してくれたり、朝食がわりとしっかりしていたり、外に出なくても宿のカフェテリアで三食どうにかなったりしたりと、宿泊環境はなかなか良かったのではないかと考える。

一切合財の荷物を背負ってKちゃんの宿泊先前まで移動する。約束の時間までには早かったので、近くのドーナツ屋でコーヒーを飲みながら作業をする。iBookのディスプレーがつかなくなったので、作業はすべて手とボールペン、紙でおこなわなくてはならない。ファイルにたまっているいらなくなった書類の裏にログ等を書き付けるのだ。なんとなく手作業のほうが文章が進むなと感心していたりすると時間がきた。

お友達のご家族がKちゃんを迎えにきてくれるのだ。宿泊先前の石段に荷物を下ろして待っていると、先にお友達のお父さんが運転するアメリカンサイズな車が到着する。ご挨拶をしてKちゃんを連れ出してくれることへのお礼を言う。なにしろ本日のお誘いが無かった場合、Kちゃんは僕と暑いさなかセントラルパーク一周の行軍に連れ出される目にあっていたかもしれないのだ。

5分くらいして約束に時間にKちゃんが下りてきた。本日はこのままお友達宅に泊めてもらうので着替えと明日の授業の用意も携えている。車を見送ってから最後の宿へと向かう。チェックインは午後3時からなので荷物をあずかってもらい、宿を出てアップルストアに行くことにした。

iBookの不調を見てもらえるかもしれないという淡い希望を抱いてだったのだが、日曜日ということもあって人が多く、相談の予約がかなり遅い時間になってしまうということだったので、今日のところはあきらめる。しかたがないので本屋に寄って雑誌を数冊購入する。帰りの飛行機のなかでの暇つぶしになるし、読んでしまった後はお土産にでもなるだろう。

宿に戻りチェックインを済ませ、割り当てられた部屋で荷物を広げ整理する。これから一週間ここで生活するので、使うものはリュックサックからすべて取り出し部屋内の適切な場所に配置していくのだ。こんな環境であっても出来るだけ人として正常な生活を営まなくてはならない。整理整頓とベッドメイキングは最低限度の義務だ。

部屋を出てACアダプターを買いに行くことにした。仲の良い宿のスタッフにその旨を説明すると、それならハーレムか中華街に行ったほうが良い。当該の製品は5ドルくらいで購入できるだろう。今日は時間的に少し遅いし雨も降ってきたので、明日たずねてみると良いだろうと教えてくれた。近くの電気屋はどうかとたずねると、難しい顔をするので、安くは無いのだなと理解する。根っからの天邪鬼なので、では如何ほどの値段差があるのかと気になったので出かけて確かめてみようと思った。それでも10ドル以下で買えてしまうのであれば、電車代を考えると悪くは無いのかもしれない。

ポートオーソリティーのバス停車場まで行きコーリングカードを買ってから、8番街を北上して一軒目の電器屋に入る。店員に携帯電話を見せて充電器はないかとたずねると「50ドル」だという。先ほど宿のスタッフから聞いたハーレム相場の10倍だ、高すぎるのでいらないと言うと「じゃあ、25ドルだ」といきなり値段が下がった。このようなボッタクリ家業をしている輩には一銭たりとも渡したくないので、「この携帯電話の購入代金より高額なのでいらない。」というと「そうなの?」と肩をくすめトボけて見せた。

さらに8番街を北上して別の電器屋にはいる。先ほどと同じように携帯電話を充電器をもとめると、「5ドル」だという。それならハーレムプライスだ。「買う」と言って5ドル札を渡した直後に、その店員は「じゃ、50ドルな」と薄ら笑いをうかべた。またか疲れるな、「先ほど、あなたは5ドルだと言いました。」と努めて丁寧に確認をすると、その店員は「5ドル引きだと言ったのだ」とシラをきった。「では、いらないので5ドルを返してください。」と言うと、目の前でやおら充電器のパッケージを開け「もう開けてしまったので、50ドルよこせ」と凄んできた。「くそくだらない冗談は結構だから5ドルを返せ」とこちらも引かずにいると、グルである店員達がこちらに集まってきた。

カウンター内に1人、こちらに3人。4対1だが、店員達のその緩みきった体型は荒事に関して完全な素人であることの証明である。実力行使の事態になってもなんとかなりそうだ。背後をとられないように商品陳列棚を背にして、せまい店内の通路を有効に捉える。これなら一度に一人ずつ対処ができる。カウンター向こうに隠してあるだろう銃火器の存在が心配だが、そのときにはここから往来へ飛び出せる距離でもある。

「いいかげん、私の5ドルを返してくれないかな」とこちらも店員をにらみつける。やるなら来い。おまえらの所業を後悔させてやる。肩掛け鞄を後ろにまわす。そのとき、一部始終を奥から監視していたであろう年配の白ひげの店員が出てきて「やめておけ、金は返してやれ」とうながし、事態は収まった。店員達の悪態を背にゆっくりと店を出る。入り口近くの陳列棚のうえでハラル印のケチャップ飯を食っていた別の店員がニヤニヤ卑屈な笑みをうかべてこちらをうかがっていた。

このタイムズスクエア周辺に点在する土産物屋や電器屋は、こうやって日々何も知らない観光客を騙したり脅したりして薄汚い生業を営んでいるのだ。ニューヨーク市に来たての物価すら良くわかっていない観光客は、ここで無駄な出費をしてしまい、場合によってはクレジットカードから法外な金額を引き落とされて、後で明細を見て青くなったりしているのであろう。

ACアダプターやメモリーカード等は緊急色の濃いものである。困っている人の足元を見て悪意の利益を得ているこの輩供に向けられる反感は、やがてその民族や人種そのものに向けられる憎悪となっていく事実に、この店員達が気づくことはないのだろう。因果は巡り巡って応報するものである。
ロクな死に方をしないとはこのことである。

それにしても、僕はボクシングをしていて本当によかった。こういった事態での判断力と何事にも物怖じしない胆力は確かに備わっている。ありがとう会長、トレーナー。

宿に戻り、スタッフや他の宿泊客に電器屋で凄まれた話をして笑っていると、日本語を学びたいと地元の高校生がいたので、すこし日本語の授業をした。あまりたくさんの話をしても覚えきれないので、日本では3種類の文字を使うことや、1から10まで数え方、簡単な挨拶などを例を挙げながら教えた。この高校生が趣味で描いているという絵もみせてもらった。画用紙の両面に色をつけたような技法で、光にかざすと暗い花々の構図の後ろに鳥の姿がうかびあがる。「アンリ・ルソーの作風に似ているね」と言ったが、こちらの発音が悪かったのか、その20世紀を代表する幻想画家の名前を知らないようだ。

明日、KちゃんはABTまで直接送っていただける。僕はABT前で待って到着を確認することになるだろう。
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テーマ:バレエ - ジャンル:学問・文化・芸術



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