FC2ブログ
北米バレエ留学についていった話
京都のはずれにある小さなバレエ教室からいきなり4人の生徒がニューヨークとボストンにバレエ留学をすることになり、教室の先生の配偶者である甲斐性なし旦那が生徒達を引率してひと夏を見守ることになったのだが…
プロフィール

引率の者

Author:引率の者
妻(元バレリーナ)が拾ってくれなかったら、僕はとうの昔に大西洋で魚のエサになっていただろうな。いまは小さなバレエ教室の隅っこで日々たのしく暮らしています。もう大丈夫。



最新記事



最新コメント



最新トラックバック



月別アーカイブ



カテゴリ



検索フォーム



RSSリンクの表示



リンク

このブログをリンクに追加する



ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる



QRコード

QR



スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ストックホルム症候群
0719.jpg

金銭的な危機を乗り越えて思う事は、お金のない者にはニューヨーク市は本当に厳しい街だということ。ここでは安全も衛生もすべてはお金で購入するものであって、工面する事ができなければ危険にさらされ虫けら同然に扱われるのである。

常駐の管理員がいる高級マンション前の道にいる物乞いは、そう遠くない将来に彼の衣服といくばくかの金銭の入っていたスープ缶を残して消滅してしまうのであろう。ユースホステルで宿泊料の足りない事を理由に宿泊をことわられ、暗い夜道をとぼとぼ引き返す家族連れが数時間後の朝日を無事に見る事は難しい。

とりあえず危機の去って安心した今、かのストックホルム症候群のようにこの街に起こる諸々の事象が以前より光り輝いて見えるのを必死で否定している。金銭の支払いに滞りが無いから人々は笑顔で接してくれる。自身に悲壮感の漂わない今、そこにつけこもうとし狡猾にすりよってくる輩はいない。

この街を嫌う気持ちは絶対に忘れてはならない。齢を重ね色々な人や社会を見て、喜怒哀楽を経験した今、この街を形づくる欺瞞や憎悪に常に気づいていなくてはならない。消費をすることが人々の地位を形づくり、存在の実感を与えてくれる。消費が出来ない事が人々の人格をおとしめ、その不安や劣等感から社会に闇と汚濁、腐敗が生じる。しかし、モノを購入し所有する事で得られる充足と安心とは、しょせん瓦礫の山上に不器用に立てられたブリキ小屋でしかない。いずれは陳腐化しゴミとなることを繰り返す。

ニューヨーク市の環境も浄化される事はないだろう。あまりにも長い間、あまりにも大量の産業廃棄物や毒物を蓄積してしまった。水は腐ったままだ。ここにそれらに蓋をするためにメディアやショービジネス、名ばかりの芸術活動といった刹那的な悦楽で形づくられる無数の巨大なハリボテが覆いかぶさっている。道行く観光客たちは頭上に輝く電光掲示板や巨大モニターにばかり気を取られて、地中に埋まる無数の人柱に気づく事は無い。

若いときは、その体力気力と無鉄砲さでこの腐臭あふれる街を突き抜けていけたかもしれないが、今は歳だし、もう少し思慮深く立ち回りたいし、なによりここにいる不幸な人々や悲しい人々を見ていると本当につらくなる。ここに長く滞在すれば、やがて僕もその毒気に汚染されてしまうのであろう。高粘度のタールによって足をとられ、そのハリボテのなかに取り込まれてしまうのだろう。人も、動物も、草木も、土も、水も、大気も、心も。呼吸は浅くなり、つかめる場所も削れてなくなり、光が薄れてくる。I can't breathe!

僕は現代社会を否定するつもりはない。一部の原理主義者のように文明を憎悪し破壊しようとは思わない。これらは人類の止まる事の無い進化であり宿命だからだ。しかし、僕がこの場所にふみとどまる必要はもうあまりないだろう。この先は、社会はネットという媒介に情報として変換され補完され共有される。独占欲も支配欲も虚勢も権威も取るに足らぬことだ。情報マトリックスと共に消費社会を離れる。21世紀のエクソダスだ。

今日はここまで。
スポンサーサイト

テーマ:バレエ - ジャンル:学問・文化・芸術



トラックバック
トラックバック URL
→http://balletseaman.blog87.fc2.com/tb.php/34-5fcfab99
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。