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北米バレエ留学についていった話
京都のはずれにある小さなバレエ教室からいきなり4人の生徒がニューヨークとボストンにバレエ留学をすることになり、教室の先生の配偶者である甲斐性なし旦那が生徒達を引率してひと夏を見守ることになったのだが…
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引率の者

Author:引率の者
妻(元バレリーナ)が拾ってくれなかったら、僕はとうの昔に大西洋で魚のエサになっていただろうな。いまは小さなバレエ教室の隅っこで日々たのしく暮らしています。もう大丈夫。



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お金がない!
いまこれをボストン行きのアムトラック鉄道の座席上で書いている。今日はこの北米旅行での最大最悪の出来事があり、今も続いているのだ。なんとか解決する方法がないか今も模索を続けている状態で、はやく日本に帰りたいというのが本音である。

そもそもは、僕がクレジットカードの機能をよく理解していなかったことが原因だ。クレジットカードの限度額というものがあるのは知っていたが、それはATMなどから現金を引き出す際に嫁せられる言わば安全機能のようなものであり、クレジットカードでの直接支払いには適用されないと思い込んでいたし、そう銀行員からも説明されたともの理解していた。また、生徒達の交通費や宿泊費、外食の費用も多数をカード決済によって立て替えていて、個人の使用額を大きく超えていたことも原因だ。

今日は朝からうまく行かないことが続いた。Kちゃんを送った後宿に戻り、今夜にボストンに向かうことになったので、一日早いチェックアウトと1泊分の宿泊料の返金を願い出たが、こちらの宿ではチェックアウトの24時間前に申告していることが必要だったといわれた。おなじ系列の前宿では当日のキャンセルで返金ができると聞いていたがこちらは違うようだ。

押し問答をしてもしかたがないし、独自のルールがあるのならば事前に確かめなかった僕が悪いので、1泊分は大変惜しいが引き下がることにした。では、アムトラックの発車時間近くまで荷物を預かってくれというと、5ドルかかるという。今夜の宿泊料は徴収されているにもかかわらずだ。徴収された宿泊料はキャンセル料として徴収するので、荷物預かり料とは違うということだ。おまけにキャンセルは実施されてしまった後だという。なんかもう疲れるので、もういいやとなり重い荷物を背負って宿を後にする。今後このものすごい環境に戻ってくることだけは勘弁ねがいたい。

プリペイド携帯電話の使用時間が残り少なくなってきたので、薬局に行き、プリペイドカードと水を持ってレジに並ぶ。僕の番が来てクレジットカードで支払おうとすると、「declined」とエラーが出て決済することができない。何度やってもできないので、店員にあやまって商品をもどしてもらうように言い、店をあとにする。昨日につづいて2回目だ。このような場合に電話する先を知らないので、日本の妻に電話して状況を説明し対策を立てることにした。ユニオンスクエアの木陰に座り携帯電話から国際電話をかける。

「1-800」から始まる無料電話でもこのプリペイド携帯電話では使用時間がどんどん減っていくのだ。用件は手短に済ませる必要がある。1度目の呼び出しでは留守番電話になってしまった。この時間は必ず家にいるはずなのでもう一度国際電話をかける。出た。陽気な声である。友人が来ているようだ。水も買えないので困っていることを伝え、いろいろ調べてから電話をしてくれ、「待つから」と伝え電話を切る。こちらのプライベートな問題を他人に知られる訳にはいかないからだ。

公園のベンチに座って朝ご飯にと取っておいたサンドイッチを食べる。この時間にここらのベンチに腰掛けているのは困っている人ばかりだ。それぞれ重大な困り事があるのだ。そんな困り顔集団の末席に座らせてもらってサンドイッチを食べる。台風の前の雲行きのように、事態は悪い方向へ動いているのがわかる。

待つ以外にやることも無いので途方に暮れていると、電話が鳴った。なんとか状況が明らかになり事態を打開する事ができるのか。妻が書類をしらべると、銀行の受付時間は平日の昼間のみとなっていて、日本時間の金曜日深夜ではどうする事も出来ない。おまけに明くる週の月曜日は「海の日」で休日だ。火曜日を待って状況の説明を受け、改善を待っていたのでは遅すぎる。なにしろこちらは水も買えない状態なのだ。直接クレジットカードの会社に電話をしてみるというので、この携帯電話の残り時間も15分と少ない事を告げ、公衆LANに接続しSkypeを利用して通話が出来る場所を探す事にした。思い当たる場所はリンカーンセンター近くのアップルストア。1ヶ月分のメトロカードもまだ数日分残っている。荷物を背負って地下鉄の駅を目指す。

このような状況で歩く蒸し暑い地下鉄駅は本当に気が滅入る。あわてて乗った地下鉄が急行だったためひと駅通り過ぎてしまった。暑い日差しの中歩いて戻る。大きなリュックサックを担いでアップルストアに入る様は物見遊山の観光客のそれだが、無言でiBookを取り出し速やかに無線LANに接続する様は手慣れたものだ。Skypeを起動するとすぐに妻から返答があった。妻の友人もまだそばにいるようで、インターネット電話はすごいねとか能天気なことを言う。失礼かとは思うが甚だ嫌な気分だ。こういう他人の家庭の急であれば、遠慮をして席を外すなり、帰宅するのが礼儀ではないのか?こちらは困り果てて電話をしているし、心身ともに衰弱し始めているのである。

妻がいうには、クレジットカード会社に直接電話すると、使用限度額を超えているので決済できない状況になっていることが判明した。使用限度額と銀行からの引き落としのタイミングなどわからないことだらけなので、再度電話をして使用金額がクリアーになる時期などを明確にしてもらうように頼む。また、今夜のアムトラック鉄道の乗車券が発券されるのかをすぐに確認する必要があるし、銀行ATMでのキャッシングがまだ行えるのかを確かめる必要もある。「気を強く持って」という妻の言葉を聞いてから、Skypeを中断しiBookをしまい、また地下鉄でペンシルバニア駅に向かう。

地下鉄構内を通ってアムトラック鉄道の乗り場まで歩く足取りは重い。朝からずっと体が水分を要求しているが、そのための1ドルを使ってしまうのが怖い。ペンシルバニア駅の構内で水飲み場がないか見回したが、当然そのような場所があるはずはない。トイレ内では手洗い場を占拠して衣服を洗う者がいた。手洗いの石けんを利用したのだろうか泡立つ衣類をかき回していたが、もう長い時間ずっとそうしている様子であった。トイレ前にはぼろぼろの身なりをした人間が横たわっていて、もうすでに油と埃で薄汚れた床の一部となりかけていた。定める焦点を失った目をして、それでも片手をあげ通行人に何かをつぶやいていた。それぞれが絶望をとおりこし意識を切断し、それでも継続する生命活動の証として単純で終わることのない動作をくりかえす。僕はいずれこの人達のなかに同化してしまうのであろうかと考える。人は少しの手違いでいとも簡単に路頭に迷い、汚れ、取り込まれてしまうのだと痛烈に実感する。

アムトラックの自動発券機に予約表のバーコードをかざす。乗車券はすでに決済されていたようで、二人分の往復チケットが出て来た。このチケットと、ボストンでの宿代は確保されている。つまり向こう三日間の寝泊まりは保証されているという事だ。

最寄りの銀行のATMでキャッシングを試してみたが、やはり不可となっている。銀行引き落としのタイミングは曖昧なのに使用停止については敏感だなと力なく感心する。ペンシルバニア駅の公衆電話がある区画に戻り、また日本に電話をする。クレジットカードは絶望だ為す術がない。

カード会社側の説明も要領をえないままだ。妻はこの使用停止措置によって夫がニューヨークの街でさまよい野宿をするはめになると懸命に訴え出てはくれたが、どうにもならなかった。きちんと銀行引き落としが出来ている間は、無知な顧客がカードの使用方法を誤り路頭に迷おうが野たれ死にしようが会社側が感知することではない事くらいは理解出来る。

こちらからもワシントンDCにあるカード会社の日本語アシスタントサービスに電話をして、なんとか状況の把握につとめる。ありがたい事にこの電話窓口は通話料がかからない。先方は妻が電話をしてきたことも知っており、妻にしたであろう説明を僕にも再度丁寧にしてくれた。決済や銀行引き落としのタイミングなど、個人と商店、カード会社、銀行間の複雑に絡まる電子マネー決済の経路を逐一たどり把握する事は難しい。わかることは今現在の諸々のカード決済による銀行引き落としの期限が8月中旬であること、最悪それまでは再びこのクレジットカードの使用はできないということだ。

また係の女性は、こういった場合には在ニューヨーク市日本領事館に申し出てみることも提案してくれた。日本領事館としては日本国民がニューヨーク市内で野宿をして危険にさらされる事をどのように認識するのかはわからないが、僕に留学生の保護者としての資格がもうないことを理由にすべてを中止し全員に帰国の勧告をされる結果になることは予想できる。これは本当に最悪の事態だ。僕の無知と無理解が原因で生徒達の夢が潰える事となってしまうのである。なんとしてでも策を講じて事態を打開しなくてはならない。

制限時間はボストンに滞在できる3日間だ。今手元にある現金はボストンでの宿泊料の他、日本円がいくらかある。ボストンでの宿泊料は多めに確保しておいたため支払ったあとにも数十ドルが残る。日本円は帰国の際の移動費を差し引き、最近の通過レートで計算すると二百ドルくらいにはなる。ここで恥をしのんで、また出来るだけ不安を与えないようにKちゃんに頼んで、いくらか貸してもらえればボストンから帰った後の一週間くらいは野宿をする必要はなくなる。この間にクレジットカードの使用限度額の引き上げを申請し受理されればよいし、とにかく時間的な余裕はできる。

今しなくてはならないことは、これ以上のクレジットカード使用を停止するために日曜日から1週間で予約しているユースホステルの宿泊のキャンセルと、日本円を米ドルに出来るだけ高レートで両替することである。再度アップルストアに出向きネット経由でユースホステルのキャンセル手続きをするよりも直接行った方が早い。

Kちゃんの終業時刻まで後2時間。急がなくてはならないのに、焦りと疲れで向かうべき通路、乗るべき地下鉄を誤ってしまう。あせるな、立ち止まれ、平常心を保て。

アッパーウエストサイドのユースホステルで、資金繰りが怪しくなったのでとりあえず宿泊をキャンセルしたい、日曜日にここに戻って来れる事を願う、と伝える。

次に数軒の両替商を見付けてあるタイムズスクエアに取って返し、一番レートの良いところで日本円を米ドルに両替する。空港から家までの電車代が微妙になったが何とかなる。もうKちゃんをむかえに行かなくてはならない。水を飲まないので汗はそれほどかかないが、重い荷物を背負い一日中歩き回ったので、僕は大層ひどい様相になっていることだろう。

ABTまでの電車の中でもう少し確実な解決策を考える。僕たちは郵便物を受け取る手段がないが、Kちゃんのお友達の住所宛に日本から現金なり小切手なりを郵送して受け渡してもらえはしないだろうか。いやそれでは、マネーロンダリングなどと当局から疑われて先方に迷惑がかかってしまうかもしれない。そうだ、アイコ先生のアメリカの銀行の口座からの小切手による送金が最適だ。EMSで郵送すれば最短4日間でこちらに届く。いますぐ送り出せばこちらの来週の水曜日か木曜日あたりに手元に現金を確保する事ができるのだ。ついでに溜まりに溜まって恐ろしいことになっているスタジオの会計関係の書類も一緒に送ってもらえば、帰国後の仕事が幾分か軽減される。Kちゃんをむかえにいった時にお友達のお母様に相談してみよう。大変あつかましいことではあるが、これしか方法がないと思った。

ABTでお母様には会えなかった。電話になってしまうが後でお願いしてみようと思う。Kちゃんを連れて、地下鉄に乗ってペンシルバニア駅近くに向かう。Kちゃんは僕の窮地を知らない。こちらの不安を伝えないようにと、つとめて普段通りにふるまうが、ついつい無言になってしまう。

二人分の夕食を買う必要があった。ペンシルバニア駅構内の安くはないサンドイッチ屋で水2本とサンドイッチ1個を買う。サンドイッチはいつものように半分こになる。この状況では大変高い買い物であったが、ペットボトルから久しぶりに味わう生水がミシミシいいながら体に吸収されていくのがわかる。気力が少しだけ戻る。

とにかく状況は厳しいが生きていく道筋はできている。慎重に状況を処理し切り抜けて行けばよいのだ。明るく振る舞え。ボストンでは贅沢できないかもしれないけど・・・。首都ワシントンDC発のボストン行きアムトラックはペンシルバニア駅に30分も遅れて到着した。これから丸二日間はニューヨークと現実から離れる事ができる。鉄道の混雑のためか、なかなかニューヨーク市街を抜け出せずにいる列車の中で、Kちゃんのお友達のお母様と連絡がついた。通話時間は残り10分。こちらの資金繰りが危なくなったので、日本から追加資金のための小切手と書類を郵送するので受け取ってもらうことをお願いすると快諾していただいた。毎度いろいろと助けてもらって本当に恐縮だ。

不安な心中は曇り空だが、北東海岸を疾走する列車から見る海岸線は夕日を浴びて光り輝いていた。夕食のサンドイッチを食べ終えたKちゃんはもう眠っている。ボストンの宿泊先に到着したらすぐに日本にSkypeをし、現在の状況と今後のプランを伝えなければならない。俺がんばれ、超がんばれ。
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テーマ:バレエ - ジャンル:学問・文化・芸術



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