北米バレエ留学についていった話
京都のはずれにある小さなバレエ教室からいきなり4人の生徒がニューヨークとボストンにバレエ留学をすることになり、教室の先生の配偶者である甲斐性なし旦那が生徒達を引率してひと夏を見守ることになったのだが…
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妻(元バレリーナ)が拾ってくれなかったら、僕はとうの昔に大西洋で魚のエサになっていただろうな。いまは小さなバレエ教室の隅っこで日々たのしく暮らしています。もう大丈夫。



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「僕、ニューヨークいきますわ」
昨年末に当バレエスタジオの生徒(6年生)であるKちゃんがユースアメリカグランプリの日本予選でアメリカンバレエシアター(ABT)夏期講習ニューヨーク校の入学許可をもらったことにより、いかにKちゃんをニューヨークまで送り出し、6週間の集中バレエ講座を受けさせ、無事に日本に帰国させるかという方策を練っていたところであった。入学許可の知らせがあったときは、スタジオ主催であり僕の妻でもあるアイコ先生と諸手をあげて喜びあったものだが、実際、12歳かそこらの女の子をひとり京都から地球の裏側まで安全に遠征させるにはそれなりの調査と準備が必要になるために思案に思案を重ねていた。

しかしここにきて、ボストンバレエの夏期講習のオーディションを受けたSちゃん、Nちゃん、Mちゃんの3名の生徒達にも入学許可の知らせが届き、ご両親からも子供たちを留学させてもよいとの了解をたまわったので、今年のバレエスタジオは異例の留学ラッシュとなってしまった。

たしかにオーディション等を主催した団体から紹介された留学ツアーに参加して、手続きなども含めて一切をおまかせをしてしまうのが一番簡単だし安全かもしれない。しかしここには査証取得に関する事務的な処理や翻訳・通訳、渡航・滞在など様々な手数料がかかってくる。渡航費や授業料、生活費、諸費にこれら手数料をあわせるとこの短期留学には莫大な費用がかかり各ご家庭の家計を圧迫することは必至である。それらをいかに抑えることができるのかが課題となっている。生徒の体力は留学の日までに鍛えあげることができるが、家庭の体力ともいえる財源については有限である。我々が使えるリソースを最大限活用し、出来る限りご家庭の負担を軽くすることが当バレエスタジオの職務であると考える。なにしろ、アイコ先生はオレゴン生まれのアメリカ人であり、僕は大学4年間をアメリカの地方都市ですごした身だ。これらの経験を生かして、他のバレエ教室にはないサービスを提供することができればカタカナ名の屋号を掲げる者としては本望である。

我々が使える強力なリソースとは、語学力とインターネット以上に使える「ひとづて」による情報力だ。早速、それぞれの学校からおくられてくる大量の英語書類を生徒とご両親にみせるために翻訳を開始する。翻訳は仕事で様々な分野にたずさわったこともあり得意分野ではあった。これらの書類をもとにしてABTとボストンバレエ両校について分析をすすめる。やはり課題は山積していた。Kちゃんの出席するABTニューヨーク校では17歳以下の生徒が単独で滞在できる寮が提供されない。旅行代理店の主催するABTツアーでは、ニューヨーク市近郊にお住まいの他人様(日本人)のおうちに日本人バレエ少年少女が大勢で押しかけて寝床から食事からお世話になる手はずとなっているという。たしかに現地在住のご家庭の保護のもと6週間の講習期間を過ごすのは健康安全の観点からも安心ではあるのだが、見ず知らずの日本人10名前後と集団で生活するのには、いくら大きなアメリカの家とはいえ少々手狭な生活環境を強いられることは否めない。

またABTの生徒には必要ないのだが(これはこれで大変心配なのだが)、ボストンバレエの生徒は正式な留学査証の取得が求められるので、ボストンバレエツアーでは査証申請の業者委託が必要であり、法的な手続きとなり別途手数料が必要となってくる。これらのツアー日程は講習の期間ぎりぎりにあわせてあるので、現地に到着してからの授業や寮生活にかかる準備などの時間がほとんどないのも心配である。時差ボケは出来る限り解消してから授業に臨みたいものである。

これらの課題を精査した結果、今回の北米留学には旅行代理店のツアーに参加することなく、独自の日程でそれぞれの学校の授業に臨むことを決定した。また査証にかかわる手続きも、僕が留学した経験から多少なりとも理解の及んでいるところがあり、こちらも独自で完了することが出来るものと判断した。

Kちゃんの滞在する宿泊先については、学校近くに確保し、食事も含めて基本的にひとりで生活をすること、バックアップとして現地の知り合いに後見人としての立場を含めて、最低限の身元保証を依頼する。アメリカには未成年者でも保護者の承諾書があれば滞在できる安価なユースホステル等が多数あるし、ゲストハウスや月ぎめのアパートを借りることも現実的な選択肢である。そもそもアイコ先生がアメリカ市民であるために、契約や身元確認にはたいへん有利である。

ボストンバレエにむかう3名の生徒達には学業中に学校から寮が提供されるので空港から学校の寮までの交通手段と数日間の滞在先を現地の知り合いに依頼して確保する。また学生ビザの取得には、僕が書類作成を手伝い、生徒とご両親と一緒に直接アメリカ領事館におもむき、公証もふくめた諸々の手続きをする。これらによってかなりの費用削減が実現できるのではないかと算用していた。

しかし、この方法では現地の知り合いの協力に依存する比率が大きすぎるのではないかという懸念が浮上した。もう10年来会っていない知り合いに依頼する案件としては度が過ぎているようにも思える。また現在のその方々のおかれている社会的状況をはっきりとは把握していないので、十分な信用に値するかと言えば疑問を感じずにはいられない。

またアメリカ合衆国への厳しい入管手続きにあたって、ボストン組は学生としての身分証明と就学査証の保持についての説明、ABTに入学するKちゃんにいたってはバレエ学校への出席を目的としていながら「査証を保持していないこと」についての説明を英語で行わなくてはならない。私立の小学校に通う者で英語の授業を受けた生徒もいるのだが、実質彼女らの実践的な英語力は皆無だといってよい。

これらの問題を前にして頭を抱えてしまった。やはり多少なりとも出費を覚悟で、旅行代理店に委託してしまったほうがよいのではないか?

「僕ニューヨーク行きますわ」

この結論に達したのは、やはり今年度だけでなくこれからも海外のバレエ学校に留学生を継続的に送り込んでいきたいという、当バレエスタジオの意向が働いた。不足する留学と現地滞在に関するデータの収集を目的にした場合に、僕のような低燃費な日本人がひとり手弁当で同行することなどは、たいした負担にはならないと踏んだからだ。酒・タバコはとうの昔にやめてしまい、ほぼ菜食で、数少ない趣味はボクシングという細身のエコ兵隊ならこの同行は適任ではないか?通訳はもとより、生徒たちへの生活環境の確保と安全保障もついてくるというからたいへんお買い得な(実質無償だが)物件ではないだろうか。「おおきな街と大勢の人は苦手」「梅雨に降り土用に照らないと夏が来ない」などという僕の田舎者体質はこの際無視してよい。これは仕事なのだから。

かくして「北米バレエ留学についていった話」は上演のはこびとあいなった。

ここから、航空券の手配やニューヨーク市内での僕と生徒それぞれの宿泊先の確保、ニューヨーク市とボストンの移動にかかる交通手段と日程の調整などに奔走することになった。同時に学校関係のすべての書類の翻訳をすすめ、ボストン組への学生ビザ取得の手続きにも取り掛かる。僕が留学したときとは随分手順が異なっていたので、再度勉強することにはなったが、なんとか滞りなく完了することができた。また、現地での学校生活を始めるにあたって必要な各種予防接種も出発日の前日ギリギリですべてを終えることができた。

僕の留学経験から事前の英語学習が留学中のバレエ講習をより有意義で高密度なもとのするために最重要であると考え、生徒たちには留学にむけて特別の強化レッスンを施して、アイコ先生の英語によるバレエ指導をもってアメリカでの授業にむけての準備を周到にした。

こうしてあわただしく出国の日となったのである。僕にとって久しぶりのアメリカであり、東海岸はほぼ10年振りである。しかし懐かしき街に再会するという期待よりは、生徒たちを守り、この留学を成功させ、さらには今後につながる道を築くいう重責を感じるにあたり身震いを禁じえないのである。
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テーマ:バレエ - ジャンル:学問・文化・芸術



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